◎民法646条2項の規定による移転◎

標記登記原因の登記簿をたまに見ます。

なんなんだ!とこの登記原因に戸惑われる方もいらっしゃると思います。

そこで、詳しく、この原因についてみていきたいと思います。

 

(受任者による受取物の引渡し等)

民法第646条
  1. 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
  2. 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。

 

条文は、上記の通りです。

委任契約の受任者が委任事務処理の為に委任者又は第三者から受任者が受け取った物は、実質的には委任者に帰属するものですから、委任事務処理上の必要が無くなったときには、これを委任者に返還すべきであるということになります。登記名義も委任者に移転する必要があります。

いろいろ調べていますと、上記の民法646条2項は、受任者が委任者を代理する権限を有しない場合に関する規定のようです。

すなわち、委任が代理権を伴う場合には、受任者が委任者の名で第三者との取引により取得した権利は、直接委任者本人に帰属します(民法99条1項)。しかし、その代理権がないときは、受任者は、委任者のために自己の名で第三者と取引をし、これにより取得した権利(民法100条本文)を改めて委任者に移転しなければなりません。受任者が委任事務処理のために受け取った物が不動産の所有権である場合には、これを委任者に引き渡し、その登記名義も移転する必要があります。

 

(代理行為の要件及び効果)

民法第99条
  1. 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
  2. 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

(本人のためにすることを示さない意思表示)

第100条
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。

 

この646条2項による権利移転は、いわゆる間接代理における代理人から本人への権利移転の為、民法の条文を直接引用しているのが実務の取り扱いとなります。

これに似た登記原因として、『委任の終了』があります。

実務においては、法人格のない社団に属する不動産に関する権利の登記は代表者個人名義ですることとし、その代表者の交替があった場合には、『委任の終了』という登記原因とする取り扱いがされていますので、それと区別するために、上記の原因となっているかもしれませんね。

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