◎私署文書の認証◎

私署証書の認証

   ア  署名又は記名押印の認証

 署名又は記名押印の認証は,当事者が公証人の面前で署名又は記名押印した場合や,当事者が公証人に対してその署名又は記名押印が自己の意思に基づいてされたものであることを自認した場合などに公証人が私署証書に付与するもので,一般に文書の認証というときはこのことを指しています。私署証書の認証は,日本語だけでなく,外国語による私署証書の場合にも可能です。
 署名又は記名押印に認証を受けると,その私署証書が作成名義人本人の意思に基づいて作成されたものであるとの事実の証明になり,証書の信用性が高まります。特に,我が国の個人又は法人が,印鑑登録証明書の制度を持たない外国で生活し,又は企業活動をする場合に,身元保証書や契約書などに公的な信用を付与する制度として,極めて重要な役割を果たしています。
 なお,第2の1(2)アで触れた離婚時年金分割制度における婚姻当事者間の合意を証する資料として,公証人の認証を受けた当事者間の合意内容を記載した私署証書も定められているところです。

手続きに必要なもの。
私署証書1通
印鑑証明書
実印
公証人認証費用11500円程

   イ  宣誓認証

 宣誓認証は,私署証書の作成名義人本人が,公証人の面前でその証書の記載内容が真実であることを宣誓した上,署名若しくは記名押印し,又は証書の署名若しくは記名押印が自己の意思に基づいてされたものであることを自認した場合に公証人がその私署証書に付与するものです。必ず私署証書の作成名義人本人が公証役場に赴いて,公証人の面前で宣誓することが必要です。アの署名又は記名押印の認証では,文字どおり私署証書の署名又は記名押印の真実性が認証されるだけで,その証書の内容の真実性まで認証されるわけではありません。宣誓認証は,国の機関である公証人が作成名義人本人に「証書の内容が虚偽であることを知りながら宣誓した場合には過料に処せられる」ことを告知した上で付与されるものであり,作成名義人本人もそのようなリスクを負ってまで,虚偽の内容と知りつつ宣誓することはないであろうとの理由などから,証書に記載された内容の真実性が担保されることになります。
 この制度は,平成10年1月1日から実施されていますが,署名又は記名押印の真実性から一歩進んで,内容の真実性の担保を求める社会の需要にこたえようとするものであり,私署証書の成立・内容に公的信用性を付与する制度として,国の内外を問わず,広く活用されることが期待されます。その活用例の一つとして,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の保護命令申立手続における宣誓認証の利用が挙げられます。
 配偶者からの暴力を受けた被害者が,更なる配偶者からの暴力を受けることによりその生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合に,裁判所が罰則で担保される保護命令を発令することによって,被害者の生命又は身体の安全を確保するという「保護命令制度」が創設されましたが,保護命令の要件の有無を迅速かつ的確に判断することができる資料として,被害者が配偶者からの暴力を受けた状況及び更なる配偶者からの暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる事情についての申立人の供述を記載した供述書であって,公証人の宣誓認証を受けたものが活用されているところです。

手続きに必要なもの
私署文書2通
印鑑証明書
実印
公証人認証費用